If your mentor won't be supportive of creativity
前略
またNatureの記事です。今回は "How to write a first-class paper"pdf版 "The write stuff",Nature 555, 129-130 (2018),doi:10.1038/d41586-018-02404-4)。アーティクルとして受理され,かつ読者を惹き付けるような第一級のペーパーを書くにはどうすればよいか,6人の科学者や編集者に(たぶん若い人たち向けの)アドバイスを求め,そのインタビューをまとめたものです。
論理構造を明確にし,何が重要でどこが独創的か,読者が理解できるよう誘導せよ。編集者のために書くのではなく,読者のために書け。言い訳で「武装」せず,自信をもって明瞭に書け。証拠に基づく事実を記述するものであっても無味乾燥にするな。創造的で魅力的な「物語」を用意せよ。しかし,必要以上に飾り,複雑にするな。他領域の読者も理解できる言葉で書け。
ぐっと縮めると,こんな感じでしょうか。とにかく,多くの人に読んでもらわないことには意味がありません。インタービューを受けた一人,Zoe Doubledayは, "If science isn't read, it doesn't exist." と書いています。オーラルのプレゼンで空席ばかり,ポスターセッションでは自分のブースだけポッカリと空間が,悲しですよね。でも良くも悪くも反応はすぐにわかります。ペーパーはどうでしょう。査読者や編集者からOKが出て雑誌に掲載されるともうそれで安心,などということはないのでしょうか。誰も読んでくれないかもしれないのに。
この記事のようなアドバイスやチップスはあちこちで目にすることができますが,裏返せば読んだだけですぐに一流の書き手になれるわけではない,ということですね,当然です。
読み進むにつれ,どうも釈然としないことが一つ,やはり,ちゃんと書いてありました。先に名前をあげた Zoe Doubleday のインタビューにありました。彼女はオーストラリアのアデレード大学で水圏(海洋・淡水)生態学を研究している研究員ですが,次のようなことを話しています。
"Students tell me they are inspired to write, but worry that their adviser won't be supportive of creativity."
つまり,若手,特に学生がこういったアドバイスにしたがって書いたとしても,指導者や編集者がこれらアドバイスに同意してくれる人でなければ,赤が入るということです。ことによると手ひどく。指導する側もこういったアドバイスと同じ発想を持っていなければ,結局のところ若手の「野心的」で「創造的」な文も,新鮮とは言えない面白くもない無味乾燥な文になってしまうことだってありうる,ということです。
若者は,経験は少ない(無い)が,自尊心だけは豊富に持っていますので,自分の文は未熟だと謙虚に思ってはいないと思いますよ。口には出さなくても,論理構成が巧みだとか,挑戦的な記述で注目される内容だとか,そんな風に思うものではないでしょうか。そうでなくては若者ではありません。実力の伴わない生意気さは,若者の特権です。齢を加えてなお生意気というのは,扱いが厄介になりますからね。
こういった本音の部分が大きな勘違いであることはよくある話ですが,実は正解である場合も少なくないのではないかと私は疑っております。そう,指導する側の誰もが,読者を惹き付けるようなペーパーを書いているのかしら,という疑問です。もちろん,これまでに少なくない数のペーパーを書き,実際さまざまな雑誌にも掲載されてきた「実績」をお持ちでしょう,ですからまったくの駄目ペーパーしか書けない人もいるのでは,などと言うつもりはありません。でも,ファーストクラスか,と言ったら結構怪しい人,実は多いのではないでしょうか。しかも,古臭い形式に凝り固まっていたりして。
上に引用した Zoe Doubleday の話は次のように続きます。
"We need to take a fresh look at the ‘official style’ - the dry, technical language that hasn't evolved in decades."
手紙の冒頭,括弧書きで「たぶん若い人たち向けの」と書きました。実はこの記事は,ベテランにこそ読んで欲しい,そしてよいペーパーとはどのようなものか,日々考えて欲しいというものではないでしょうか。
さて,今あなたを指導して下さっている先生は如何でしょうか。旧態然としたフォーマットの信奉者だったら,私には「お気の毒に」としか言いようがありませんね。あなたはどう乗り越えますか。自分は未熟だからと謙虚に指導の先生にしたがいます,なんて言いませんよね。
では。体を大切に。
草々
2018年3月30日