今そこにある問題 --- Clear and Present Problem ---
前略
今年も日本人の研究者がノーベル生理学医学賞を受賞しましたね。喜ばしい限りです。受賞した大隅先生は基礎科学の重要性を力説していらっしゃいますが,報道を見ていると,大隅教授の言葉を紹介する一方で臨床への応用を必ずと言っていいほど付け加えてきます。社会はどうしても目先の「利益」に影響されます。役立つことを敢えて強調しなければならない社会は,文化的に未成熟な証なのかもしれません。
もう1つ,記者会見等を見て違和感を感じたのは,さて奥さんは本当はどう思っているのだろうか,ということです。実はこの違和感は今年に限ったことではありません。大隅さんの奥さんも大学院で同じ道を志していた方のようですから,妻がノーベル賞を取り夫が「内助の功」,という世界もあり得たわけです。
ちょうど明治大の藤田結子教授も「妻の献身」はノーベル賞受賞に不可欠なのか(accessed 2016-10-10)という記事を書いております。有料コンテンツですが,この記事の内容については 『<ノーベル賞>日本人の女性研究者が出ない理由』(accessed 2016-10-10)という形で読むことができます。
ノーベル賞でもその他の賞でも,ましてや大隅教授ご夫妻のことが問題なのではありません。女性研究者の置かれている立場,社会における男女それぞれの生き方についての問題です。
妻に家庭を任せっきりにしてきた我が身が言えることではありませんが,女性にとっての結婚,出産,子育ては男性にとってのそれと,まったく異次元の大問題でしょう。
あなたは,どう選択していくのでしょうね。まだ先の話のようで,実は案外 clear and present 'problem' かもしれません。
一方,Scienceには,"When you're the scientist in the family"という,お馴染みAdam Rubenのジョーク混じりの記事(2016.9.21,DOI: 10.1126/science.caredit.a1600133)が載っていました(男女の立場の違いを書いた記事ではありません)。
冒頭,
Lots of people travel on Thanksgiving, but 10 years ago, I did it in reverse. I stood up from the Thanksgiving table, apologized to my extended family and my then-girlfriend (now-wife), started the car, and drove an hour and a half south-grumbling the whole time. I had to go. I needed a few drops of mouse blood.
とあります。下線部が,boyfriend,husbandでも,何の違和感なく記事が掲載されるのかな,と思ってしまいました。
どういう選択をするかはそれぞれの問題であり当事者でもない人間があれこれ言うべき問題ではありませんが,どれを選択するにしてもジェンダーが理由にならないことを素朴に思う次第です。
では,健康にだけは留意するように。
草々
2016年10月10日