How do proteins recruit their partners?
前略
以前(2016.6.142017.3.12017.4.22),タンパク質の招集(recruitment)について書いたことがありましたが,今回もその問題です。(単純計算だと)タンパク質分子の雑踏のような細胞内で,タンパク質(やその他機能性高分子)は,どのようにして仕事仲間どうし集まっているのか,ということでした。その後,ヒントを与えてくれそうな記事やレポートなど,折りに触れて探してきたのですが,先日,"Protein complexes assemble as they are being made"(1)というNatureの記事を見つけました。
酵母菌内の多くのタンパク質複合体が,そのサブユニットが完成する前の段階で,"cotranslational"に,つまり翻訳と同時進行で会合(assembly)しており,有害なタンパク質が凝集するのを防いでいるのではないか,という研究を紹介したものです。残念ながら,元になっているShiberらのレポートは有料なので要約しか読んでいません。
原核細胞では,ポリシストロンmRNAによる限定された空間でのサブユニット共翻訳的合成が知られているようですが,真核細胞ではそういったポリシストロンによるmRNAではなく,2つのmRNAが何らかの方法によって接近した場所に存在し,一方のサブユニットが他方のサブユニットの完成前,折り畳まれる前の新生タンパク質鎖と会合するというものです。これは,細胞質内でのタンパク質の輸送や例の招集(recruitment)についての話ではありませんが,ちゃんと,
"Although it was thought for many years that protein subunits diffuse freely in the cell and form complexes through random collisions, this seems unlikely, given that the cellular environment is extremely crowded."(1)
とあるように,やはり細胞質内は相当混雑しており,生体機能性高分子が単純に拡散,ランダム衝突で(関連分子どうしの親和性などにより)集積するということでないことがわかります。
Shiberらはabstract冒頭で,
"The folding of newly synthesized proteins to the native state is a major challenge within the crowded cellular environment, as non-productive interactions can lead to misfolding, aggregation and degradation."
と書いてます。混雑したタンパク質集団の中で,生まれたばかりのタンパク質がちゃんと会合相手を見つけることができず仕舞いになり,折り畳みに失敗した出来損ないのタンパク質として溜まってしまうことの問題を取り上げているわけですが,私としては,やはり細胞内は混み合っているんだ,ということが確認できただけでとても嬉しい気分になりました。
それで心配になってきたことは,最近のCGです。以前よりずっと本物らしく見えます。今の表現で言えば「リアル」に見えるということ,でも「らしく見える」であって「リアル」,本物ではないのです。説明のためのものですから,不要のものを省略するのはCGだけではありません。昔から模式図はいつもそうでした。そもそも物理学など,系を単純化するために影響の小さいものなど省略して考える習慣があります。しかし,なまじCGが本物のように見えるだけに,罪づくりではないかと心配してしまいます。細胞内があんなにスカスカで,分子が勝手に集まってきます。まるで,個々の分子が意志を持った生き物のようにさえ見えます。それが誤解を招くのではないかと気になるのです。
"assemble"と"recruit"も気になるんです。assembleは会合でしょうね,集合でもいいのでしょう。recruitはどうでしょう。しつこくてごめんなさい。個人的な印象としては,高分子が他の分子を招集するという意味で,どこかしら主体性というか,単なるランダム衝突ではなく,目的の分子を招き寄せる機能を持っていて,それを適切に使っている,そんな図式を感じます。つまり,"recruit"が使われると,暗に分子に意志があり,意図的に他の分子を動かしている,つい印象を持ってしまいます。
動物の行動をヒトに重ねることには注意が必要で,分子はなおのことです。でも,"recruit"や最近のきれいなCGにはそんな匂いを感じてしまいます。それが取り越し苦労で,的外れで,私だけのことならいいのですが。
では。お体,大切に。
草々
2018年9月10日
  1. Mayr C. Proteins assemble as they are being made Nature. 2018-August.(doi:10.1038/d41586-018-05905-4) PDF version
  2. Shiber A, et al. Cotranslational assembly of protein complexes in eukaryotes revealed by ribosome profiling Nature. 2018-August. (doi:10.1038/s41586-018-0462-y)