科学者も人の子 --- Scientists, are Human too.---
前略
先日,NHKのフランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 で「握りつぶされたブラックホール」という番組を見ました。スブラマニアン・チャンドラセカールが発表した白色矮星の質量限界(チャンドラセカール限界)について当時の天文学の権威,アーサー・エディントンがつぶしたというシナリオでした。チャンドラセカールの理論はブラックホールの存在を理論的に裏付けるものなので,上記のタイトルとなっているわけです。
科学エンターテイメントですので多少の脚色はあるのでしょう。二人の確執が,実際どれほどのものだったか,それぞれに真実があるのでしょう,当然我々には知ることはできません。
実は,今年7月,Natureに"How scientific culture discourages new ideas"(DOI: 10.1126/science.caredit.a1600102)という記事が載っていました。
その冒頭部分を訳すと,
科学の進歩,そして科学者としてのキャリアは新しいアイデアによるものだ。それゆえ,科学者の世界は進歩を生み出すもととなる知的な革新を歓迎するものと思うだろう。ところが,最新の2つの研究は正反対の結果を示した。1つは,その研究領域での傑出した,権威あるリーダーの存在がいかに新参者を失望させ,その領域の常識にとらわれないと思われるような新しい発想を台無しにしてきたかを検証したものである。もう1つは,革新的な研究が,少なくとも最初のうちは,注目を集めないよう,価値があると認められないようはたらく『新規なものに対する偏見』を明らかにしたものである。
科学者も人の子,いろいろなしがらみや感情が絡むでしょう。だから,嫉妬,妨害,策謀があっても不思議ではありません。これは科学の世界に限ったことではありません。また,人と人との関係だけでもありません。組織や国の間でも見られることです。そして,たぶんチンパンジーなどでも。
あなたには人の足を引っ張らないで学び,研究して欲しい,などときれいごとは言いませんが,ただ,常に自分を見つめ直す時間は必要でしょうね。早めに修正するために。
チャンドラセカールはその後再評価され,ノーベル賞も受賞し,上述の「チャンドラセカール限界」やX線観測衛星にも名前を残してします。
では,体には十分気をつけて下さい。
草々
2016年 9月30日