持続可能なバイオメディカル研究活動に向けて --- Sustainable biomedical research enterprise ---
前略
Nature 538号,"Agents ofchange"という記事を読みました。アメリカのポスドクの65%がlifesicence関係ですが,大学・研究機関,そして産業界もかつての急成長も鈍化し始め,PhDのcareer,研究資金で深刻な競争が起きています。記事は,このバイオメディカル領域のコミュニティーを変革しようという若手グループ・リーダーにインタビューしたものです。
これに関連して,Bruce Alberts,Marc W. Kirschner, Shirley Tilghman, and Harold Varmus : Rescuing US biomedical research from its systemic flawsも目を通してみました。なかなかすごい人たちが書いてます。
バイオメディカル領域はどこまでも発展し続けるという誤った前提のもとで研究が拡大してきたが,実際には資金等リソースには限界があり,これまで通り拡大しようとする研究システムとの間で大きな齟齬が生じてきている。このため研究資金やポストをめぐる過激な競争,増え続けるPhDやポスドクなど若手研究者の現状・将来,多量の印刷待ちのアーティクルとその質,といった問題が生じている。これはシステムに欠陥があるからで,それを是正し持続可能なものに再構築しなければならない。
というものですが,何分,アメリカの若手研究者への給与やラボの研究費制度,行政や法令用語に詳しくないので全部を理解するのは難しいですね。
こういったペーパーはいくつもあって,このままだと皆がバラバラに意見を言うだけでまとまっていないという印象を与えてしまう,ということで,Nature記事のインタビューに登場していた3人のうちの1人,Pickett らがこれらペーパーをまとめ,共通して勧告できそうなことを8つに絞ったのが, Christopher L. Pickett, Benjamin W. Corb, C. Robert Matthews, Wesley I. Sundquist, and Jeremy M. Berg : Toward a sustainable biomedical research enterprise: Finding consensus and implementing recommendationsということでしょう。8つすべてが完全にコンセンサスを得られているかというとそうではないようです。主に,研究費のあり方,大学院生・ポスドクの待遇,多様なキャリアパスの提示,staff scientistの増員・活用,といった事項についての提言になっています。
実際にこういった意見が採用され変化の兆しが見えてきているのか私にはわかりませんが,いろいろなキャリアの人たちがいっしょに科学政策の提言をしていくところに意味があるのでしょう。
Gary McDowellのインタビュー中の言葉が印象に残ります。
I don't think junior researchers should have to martyr themselves for science.
こういう厳しい状況がアメリカの1つの側面である一方,若手と科学者のリーダー的立場の人たちがいっしょに科学政策を提案し,PNAS上などで議論している姿もまたアメリカのもう1つの顔でしょう。
翻って日本ではどうでしょうか。科学者がもっと科学政策(研究費だけでなく)に対して,現実的で責任ある意見を持ち,提案していって欲しいですね。その中にいるわけでもなく,実態をきちんと調査した上での意見でもなく,単なる印象で書いていますから,"責任ある"と要求していながら自分は無責任ですけどね(ゴメンナサイ)。
草々
2016年11月30日