トリパノソーマ --- Trypanosoma brucei ---
前略
トリパノソーマ属のうち,アフリカのヒト睡眠病病原体であるブルース・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei)をフェルトで作ってみました。トリパノソーマに関心を持っているあなたのことですからご存知とは思いますが,ブルース・トリパノソーマは,ニ宿主寄生虫でツェツェバエを媒介してヒトに感染します。生活史の中で形態が変化しますが,今回作成したのはベン毛が核の後方から伸びるtrypomastigoteで,ヒト血流内で見られるスレンダー型です。
ヒトは,トリパノソーマに対抗する因子(trypanolytic factor)を持っていますが,ブルース・トリパノソーマの亜種であるローデシア(T.b.rhodesiense)とガンビア(T.B.gambiense)には効果がありません。ヒトの免疫系に対して,細胞表面を特定の糖タンパク質(VSG)で覆うとともに,高い変異性を持つ特殊な遺伝子群により「衣替え」をして対抗しているからです。このような寄生体と宿主の攻防は病理学的な視点のみならず進化の面でも重要な課題を提供していますね。
また,トリパノソーマは,GPIアンカーRNA編集キネトプラストなど,最新の分子生物学における課題に多く関わっており,基礎科学の研究対象としても重要な生物なのです。
トリパノソーマ No.1
トリパノソーマ No.2
トリパノソーマ No.3
今回は,片面は外観そのままを,その裏側は細胞内部を表現するように製作しました。決して魚の半身ではありません。
上図は,表裏の様子がわかるよう,少しずつ回転させて撮影したものです。ちなみに,トリパノソーマは,ベン毛の先端側が「前」なので,「ベン毛がなびくような恰好」ではなく,ベン毛の先端側(写真の下方)に泳ぐということになります。知らなかったでしょう。この形から想像するのとは逆なのです。
核とミトコンドリアの一部は断面を表しています。ベン毛を細胞膜で覆うとPFR(paraflagellar rod)が見えなくなってしまうので,今回は裸のままにしました。
細胞内部の詳細については,以下の文献を参考にしました。
では,健康に留意して下さい。
草々
2015年 4月 7日