三共堤・丸田沢堤の自然
スズタケ Sasamorpha borealisc (イネ科)
スズタケ
いわゆる「クマザサ」の仲間である。散策路の名前にも使われているが,森全体どこでも見ることができる。整っていれば風情もあるのだろうが,たいてい雑然として「薮」の印象を拭えない。
スズタケ全形2
竹は木か草か議論も分かれようが,「かたい」という理由で木に入れた。自信のない人間はすぐに権威に頼るので,ここでも強い味方を紹介しておこう。小林萬壽男「植物形態学入門−教師のための植物観察−」(共立出版,1975)P.37である。
スズタケの蕾
5月,普段丁寧に見ることのないササであるが,どうやら蕾のようだ。
スズタケは120年周期で花を咲かせ,開花後はその年のうちに枯死するという。この手の話はよく聞くが,120年とはずいぶん長い。一体誰が確かめたのだろうか。
スズタケの蕾拡大
実際には種によって異なり,周期性のないものもあるようだ。また,一斉開花は環境ではなく遺伝的なものが関係しているようで,同一の親から由来する株がある期間をおいて一斉に開花・枯死するという。
スズタケの花1
開花した株が年内に枯死する(らしい)ということであり,森のササが一斉にすべて枯れてしまうわけではない,ということだ。
花が咲き,雄しべがこぼれてきている。突っつくと花粉が飛ぶ。決して黄色い花ではなく,黄色の葯がぶら下がっているだけである。白い糸クズ状のものが雌しべであろう。
スズタケの花2
スズタケ
スズタケの葉
隈取りがあるから「隈笹」である。しかし,隈取りは黒か赤,目の隈だって黒ではないか。ひょっとすると最近の歌舞伎は色々な色を使っているかもしれないので,不用意なことは言えない。
スズタケの若葉
スズタケは竹皮が残っているのでササということになるのだろうか。梅雨に入ってから若く元気のよい葉が目立つ(雨で濡れているので余計そう見える)。背後には枯れたササの葉も見える。森は静かに新旧交代している。
もう1つのササの花
5月に多くの花が咲いていたが,2ヶ月近くたってまた花が咲き始めた。同じ種類なのだろうか。つぼみの形はよく似ているが花だけで判断するのは難しい。
もう1つのササの花
ちなみに,この年は冬になってもササの花が見られた。株によって「遺伝子時計」も異なり,開花期がずれたものだろうか。
スズタケ
2016年に続き,2017年も花が咲いた。しかも,つぼみが非常に多い。公園全体,どの株も花をつけているわけではない。やはり,「遺伝子時計」が異なる株が複数存在するということだろう。
いずれにせよ,ササの開花はめずらしいことではない,ということだ。
スズタケ
チゴユリといっしょに「記念写真」を一枚。