イクチオステガ Ichthyostega sp.
東グリーンランドのデボン紀後期地層(Celsius Bjerg)で発見されたイクチオステガ(Ichthyostega)は、四肢形の脊椎動物(tetrapodomorph)の中でも最初期の四肢動物である 4), 7) ,8)。
体長は約1.5mである 4)。前肢は現生四肢動物と相同な上腕骨・橈骨・尺骨を持つがその先は不明であり、後肢は大腿骨・脛骨・腓骨、そして5本指を持つ 7)とされたが、実際は7本である 1), 4), 10)。そして尾には鰭もついている 4), 7)。
後肢は足と言うよりはパドル状で、泳ぐ時のオール役や水底を移動する際に体を安定させる役割を持っていた 4), 9)。
全体として、前肢によって上体をある程度持ち上げることはできても、現生の陸上四肢動物のような歩行はできず、基本的には水生で浅瀬などを遊泳、もしくはシャクトリムシのように腰を上下に動かしたり、トビハゼのように前肢を同時に動かして移動していたと思われる 1), 4), 9), 10)。
イクチオステガは洪水など流されてできた堆積物中で見つかっており、本来の生息地についての情報は極めて少ない 2), 8)。デボン紀四肢動物の多くが淡水あるいは河口付近の汽水域に生息していたと考えられていることから 8)、 イクチオステガも同様と思われる。
イクチオステガは明らかに捕食者であり 8)、おそらく、時に水面から頭部の一部を出し、浅瀬に潜んで獲物を待ち伏せていたのだろう。
デボン紀四肢動物は、もっぱらグリーランドで見つかったもので、そこはデボン紀当時はユーラメリカ(Laurussia (ローラシアではない!), Old Red Sandstone continent)大陸の一部で赤道付近にあった。しかし、最近、そこからかなり離れた場所でもイクチオステガと思われる下顎化石が見つかっており、海岸付近を遊泳してかなり離れた場所にまで移動していた可能性もあるようだ 3), 5), 8)。さらに、当時の南極近くでもデボン紀四肢動物が見つかっており、暖かな環境だけでなく、広く一般的に分布していた可能性もでてきている 5)。
イクチオステガは四肢動物の中でも、現生の陸上脊椎動物としての四肢動物に非常に近い四肢動物ステムグループであるが、現生陸上脊椎動物のような歩行はできず、結局のところ、完全に陸上進出できなかった(しなかった)グループということになる 1), 2), 9), 10)。
2021年6月 - 8月 制作
参考文献・サイト:
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