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ウェツリコラ Vetulicola rectangulata
(ヴェツリコラ)
ウェツリコラ #01
ウェツリコラ(Vetulicola)は、奇妙で謎多いカンブリア紀初期の属の1つであり 1), 2)、代表的な種は、V. cuneataV. rectangulataである 4)
ウェツリコラ属が含まれるウェツリコラ綱(Class Vetulicolida、vetulicolian)は、二分した体を持っている 4)V. rectangulataは、前方部の長さが約5−7cm、高さが約3-4cmであり 1)、尾部の長さは約2.5-3cm(参考文献1のプレート1図9上で計測)なので、全長は最大でも10cm程度であろう。
ウェツリコラ #02
V. rectangulataの前方部は側方から見て丸みを帯びた四角形をしており、比較的丈夫な被膜構造(文献1では"covering"と呼んでいる)で覆われている 1)。前方部の周囲には、被膜構造で形成された縁取り状領域があり、背側後方角には鰭状の突起が、また後端中央と後方の下にも小突起が見られる 1)
被膜構造は、側方中央部で前端から後端まで至る明確な溝で隔てられており、この溝には5つの嚢状構造が並んでいるが 1), 5)、これらは開口部で鰓裂と考えられている 3), 4)
ウェツリコラ #03
後方部は7つに分節している 1)。各分節も被膜構造で覆われ、より柔軟な"関節膜(articulating membranes)"でつながっている 6)。最後尾の4つの分節は卵型をした鰭状構造を支えている 1)。これは垂直方向に伸びたもので、後方部は左右方向への柔軟性を持っていた 2), 4), 5)
後方部体軸に沿って消化管があり、肛門は体の終端に開口していると思われる 1)
ウェツリコリア綱のメンバーが付属肢や眼を持っていたという証拠は見つかっていない 4), 5)
ウェツリコラ #04
ウェツリコラは咀嚼機構などを持ち合わせていないことから、底生遊泳者で濾過食性 1)だったか、懸濁食性だったと思われる 3)
ウェツリコラは、体腔を拡げることで口から大量の海水を吸い込み、続いて体腔を収縮させれば側方開口部から排水できたであろう 3)。内部でガス交換が行われたかもしれないし、側方開口部でもガス交換が行われた可能性もある 3)。排出された水は推進力としても使われたかもしれない 1)
ウェツリコラ
ウェツリコラ綱の系統学的位置についてはなお議論が続いているものの 1), 2)、後口動物ないし後口動物のステムグループであるということでは概ね合意されているようだ 5), 6)
2021年3月 - 5月 制作
参考文献・サイト:
  1. Aldridge RJ, Xian‐Guang H, Sivester DJ, Sivester DJ, Gabbott SE (2007) The systematics and phylogenetix relationships of Vetulicolians. Palaeontology 50: 131-168. (DOI:10.1111/j.1475-4983.2006.00606.x.)
  2. García-Bellido DC, Lee MSY, Edgecombe GD, Jago JB, Gehling JG, Paterson JR (2014) A new vetulicolian from Australia and its bearing on the chordate affinities of an enigmatic Cambrian group. BMC Evol Biol 14, 214. (DOI:10.1186/s12862-014-0214-z.)
  3. Ou Q, Conway Morris S, Han J, Zhang Z, Liu J, Chen A, Zhang X, Shu D (2012) Evidence for gill slits and a pharynx in Cambrian vetulicolians: implications for the early evolution of deuterostomes. BMC Biol 10, 81. (DOI: 10.1186/1741-7007-10-81.)
  4. Shu DG, Conway Morris S, Han J, Chen L, Zhang XL, Zhang ZF, Liu HQ, Liu JN (2001) Primitive deuterostomes from the Chengjiang Lagerstätte (Lower Cambrian, China). [abstract] Nature 414: 419-424. (DOI:10.1038/35106514.) (The full-text was referred to ResearchGate.)
  5. Shu DG, Conway Morris S, Zhang ZF, Han J (2010) The earliest history of the deuterostomes:the importance of the Chengjiang Fossil-Lagerstätte. Proc. R. Soc. B 277:165-174. (DOI:10.1098/rspb.2009.0646.)
  6. Vinther J, Smith MP, Harper DAT (2011) Vetulicolians from the Lower Cambrian Sirius Passet Lagerstätte, North Greenland, and the polarity of morphological characters in basal deuterostomes. Palaeontology 54: 711-719. (DOI:10.1111/j.1475-4983.2011.01034.x.)