カンブロラステル Cambroraster falcatus
(カンブロラスター)
(カンブロラスター)
体長は約30 cm、幅は最大で約18 cm 3)。前部甲皮複合体(シールド状の甲皮)が、全体長の半分以上を占めている 3)。この前部甲皮複合体は、中央に位置する幅の広い鎌形・馬蹄形のH-エレメントと、その下の左右側方に位置する2つのP-エレメントからなり、P-エレメントは前縁部でつながっている 3)。
頭部腹側にはラディオドンタ特有の口器円錐があり、その両側に1対の前部付属肢がついている 3)。
H-エレメントの後縁左右には窪みがあり、背側を向いた楕円形の眼が顔をのぞかせている 3)。
口器円錐は、4つの大きなプレートが7つの小さなプレート列を挟んで放射四角形を構成しており、四角形の中央開口部内には鋸歯プレート配列が見られるる 3)。
胴体は短く断面が三角形状で、8対の側方フラップがある 3)。それぞれのフラップには、他のラディオドンタでも見られる薄葉の帯構造と思われるものが体の正中線付近から伸びている 3)。この構造は、最前フラップの前方にも3対見られる 3)。恐らく、setal blade(櫛状構造)と呼ばれているものであろう。
体の最後部には、小さな2対の尾鰭状構造が見られる 3)。
体形からは敏捷な遊泳捕食者には見えない。付属肢も肉食性ではなく、濾過食性で海底近くで遊泳していたと考えられる 3)。付属肢を側方から中心に寄せて堆積物を舞い上げ、付属肢全体でバスケット状の構造を作り、二次棘で濾過した微小生物を口で吸引するという摂食形態が考えられている 3)。
ただ、堆積物を掘り起こすには丈夫な付属肢が必要であり、カンブロラステルの付属肢は繊細過ぎるとして、懸濁食性であるという考えも報告されている 2)。あるいは、頭部の大きなシールドを使って堆積物を掘り起こしていたのかもしれない。そうして生じた懸濁状態に含まれる埋在微小生物を濾過していた可能性もある 2)。
発見された化石群は脱皮殻で、集団生活の可能性を示している 3)。
参考文献・サイト:
- Caron JB, Moysiuk J (2021) A giant nektobenthic radiodont from the Burgess Shale and the significance of hurdiid carapace diversity. R. Soc. Open Sci. 8: 210664. (DOI: 10.1098/rsos.210664)
- De Vivo G, Lautenschlager S, Vinther J. (2021) Three-dimensional modelling, disparity and ecology of the first Cambrian apex predators. Proc. R. Soc. B 288: 20211176. (DOI: 10.1098/rspb.2021.1176)
- Moysiuk J, Caron JB (2019) A new hurdiid radiodont from the Burgess Shale evinces the exploitation of Cambrian infaunal food sources. Proc. R. Soc. B 286:20191079. (DOI:10.1098/rspb.2019.1079)
- Liu Y, Lerosey-Aubril R, Audo D, Zhai D, Mai H, Ortega-Hernández J (2020) Occurrence of the eudemersal radiodont Cambroraster in the early Cambrian Chengjiang Lagerstätte and the diversity of hurdiid ecomorphotypes. [abstract] Geol. Mag. 157(7): 1200 - 1206. (DOI: 10.1017/S0016756820000187)